【作業療法士・保育士・管理栄養士監修】
親子で笑顔♪
無理なくできる箸の持ち方練習法
私たちが幼い頃に教わり、日々当たり前のように使っている箸。いざ我が子に教えるとなると、「いつから始めるの?」「どうやって練習するの?」とお悩みの親御さんも多いもの。
今回は、保護者さまからも質問の多い”箸の練習"のあれこれについて、当園で実践している練習法などを交えてお話しします。
なぜ正しく持てたほうが良いの?

そもそも、なぜ箸を正しく持てることが良しとされているのでしょうか。
マナーが向上する
食事のマナーと聞いて、箸使いが真っ先に浮かぶ方は多いのではないでしょうか。
昔からある作法に倣うのは古臭いと感じられることもありますが、箸の持ち方は私たち日本人が継承してきた普遍的なもの。きちんとした持ち方で箸を持つ手元は、それだけで美しく、品の良さを感じられるものです。一緒に食事をする相手に不快な思いをさせないためにも正しい持ち方を身につけましょう。
ストレスなく食事ができる
箸には12通りの機能があります。
『つまむ、はさむ、押さえる、掬う、裂く、乗せる、はがす、ほぐす、くるむ、切る、運ぶ、混ぜる』驚くべきことに、私たちは箸でこれだけたくさんの作業をしているのです。そして、これらは箸を正しく持った時に最もスムーズに行うことができます。その結果、つまんだ食べ物が落ちる、魚が上手くほぐせないなどの失敗を最小限に、ストレスなく食事をすることができるのです。
集中力や忍耐力の向上
箸で食べ物をつまむには、5本の指(特に親指、人差し指、中指)を独立させて動かします。細かい指の動きは脳を刺激し、集中力や忍耐力、持続力を養います。それらは、子どもの学力の向上や脳の老化防止へとつながると考えられています。
鉛筆やペンの持ち方を習得しやすくなる
箸を正しく持った状態で下側の1本を抜くと、ペンを持つ形になることはご存じでしょうか?
幼少期に箸を正しく持っていると、やがて鉛筆を持つ頃になってもスムーズに習得できるようになります。正しい鉛筆の持ち方で字や絵を描くと、さらに指が発達し、長時間でも疲れにくくなるというメリットも。就学しても、長時間集中して勉強に取り組むことができるようになります。
練習はいつから始めるの?

箸は幼い頃から練習するのが良いとされていますが、これには「○歳から」という明確な年齢の決まりはありません。年齢よりも重視されるのが、子どもの発達の度合いです。
スプーンやフォークを鉛筆持ちで持てたら
箸の練習のスタートの目安としてよく言われるのが、スプーンやフォークを鉛筆のように持つことができるか、です。これは、当園でも保護者の方からご質問があった際にお答えしている目安の一つ。
例としてスプーンで説明すると、その 持ち方には3つのステップがあります。

●にぎり持ち(6ヶ月~1歳半頃)
離乳食期の持ち方です。上手持ちとも呼ばれ、手全体を使って上から持ちます。まだ指や手首が発達していないため細かい動きはできず、食べこぼしも多い時期です。

●つまみ持ち(1歳半~2歳頃)
下手持ちです。幼児食が始まり、手首をひねることができるよう になってきました。下から持つので、にぎり持ちより難易度が上がります。

●鉛筆持ち(2歳~3歳頃)
その名のとおり、鉛筆を持つようにスプーンを持つ持ち方。大人に近い持ち方です。
鉛筆持ちができるようになったら、指の動きが発達し、細かい操作ができるようになった証拠。しばらく様子を見て、安定したと思ったら箸の練習を始められます。
箸に興味を持ち始めたら
どれだけ体の機能が備わっても、子ども本人に興味がない状態ではうまくいかない、ということは多いもの。それは、箸 の練習も例外ではありません。
家族が箸を使って子どもと一緒に食事をすることで「自分も使ってみたい!」と興味を持つ子もいます。その気持ちを大切に、練習を始めてみましょう。
保育園・幼稚園で箸を使い始めたら
3~4歳頃になると、通っている保育園や幼稚園から「箸を持ってきてください」と言われることがあります。園の先生から言われると焦ってしまうという方もいるかと思いますが、そんな時も無理強いは禁物です。先生は乳幼児教育のプロ。興味を持たせる声かけや方法を熟知しています。つまづいた時は先生に相談しながら、子どもの負担にならないように練習を進めましょう。
始める前にしておきたいこと
先ほど箸の練習を始めるには年齢よりも手指の発達が重視されると述べましたが、指の力をつけておくと練習がスムーズに進みやすく、正しい持ち方を習得しやすくなります。
それには、日々のあそびの中に筋力を鍛えられるあそびを取り入れるのがおすすめです。
そこで、園でも実践している、指の力をつけるのに効果的なあそびをご紹介します。尚、ここで紹介する写真は、すべて株式会社紬が運営する児童発達支援センターこむぎの手作りおもちゃです。もちろん、手作りしなくても、市販のものにも似たおもちゃはたくさんあります。
トング・洗濯ばさみ

おままごとでトングを使ったり、洗濯バサミで物を挟んだりという動きは、指の筋力を鍛えるのに最適です。この時、親指・人差し指・中指の3本を使っているかを確かめながら行いましょう。
トングで挟むものについては、最初はスポンジのように弾力のあるものや、引っ掛かりがあるような挟みやすいものから始め、徐々に固いもの、丸いものなどに挑戦していくと良いですよ。
引っ張り出しあそび

箸の練習というと、一つ前で挙げた3本の指を鍛えることに注目されがちですが、一見添えているだけに見える薬指と小指にも、土台である下の箸を支えて固定するという役割があります。
支える側の2本の力を鍛えるには、布を引っ張り出すタイプのおもちゃがおすすめです。
作り方は簡単!箱に穴を開け、布を入れるだけ。穴を小さめにすることで布が出づらくなり、引っ張る時に少し力を要します。この時に薬指と小指で布を掴んで引っ張り出すようにしてみましょう。
ネジ回し

箸の練習というと、一つ前で挙げた3本の指を鍛えることに注目されがちですが、一見添えているだけに見える薬指と小指にも、土台である下の箸を支えて固定するという役割があります。
支える側の2本の力を鍛えるには、布を引っ張り出すタイプのおもちゃがおすすめです。
作り方は簡単!箱に穴を開け、布を入れるだけ。穴を小さめにすることで布が出づらくなり、引っ張る時に少し力を要します。この時に薬指と小指で布を掴んで引っ張り出すようにしてみましょう。
意志力は鍛えることができる!

マシュマロ実験の話に戻りますが、「やらない力」を発揮して、その後成功をおさ めた子ども以外の「やらない力」があまり備わっていない子どもは、諦めるしかないのでしょうか?
答えは“NO”です。「やらない力」に「やる力」と「望む力」を含めた『意志力』は鍛えて伸ばすことができます。
その方法について、普段ののどか保育園での保育を交えてご紹介します。
子どもの感情を言葉にして共感する
幼児期の子どもは、自分の感情を言葉で説明することがまだ上手ではありません。そのため、嫌なことがあった時や子ども同士でトラブルが起きた時などは感情が先立ち、自制をするのが難しいものです。
そんな時は、保育者がそれぞれの子どもの思いを受け止めてあげる必要があります。「○○が嫌だったんだね」「一緒に遊びたかったんだね」などのように、子どもの気持ちを代弁して共感してあげることで、子どもも自分の気持ちを理解してもらえるのだと安心できるようになります。さらに 、自分が今後どのように気持ちを表現すればいいのかを学ぶこともできます。
そうしていくうちに、自分をコントロールする力がついていくのです。(※出典1)
子どもの意志を尊重する
子どもの意志を尊重するといっても、甘やかして子どもの言いなりになるということではありません。
さて、以下の2つのうち、どちらが子どもの意志を尊重しているでしょうか?
園でトイレに行く時。
①「トイレに行きますよー」と言いながら保育者が子どもの手を引いたり抱き上げたりして強制的に連れて行く。
②「トイレに行こうね」と言って手を差し出したり、そっと手を取って子どもの自主性に任せて一緒に行く。
答えは②です。①は大人の意志を感じ、半ば強制的に連れて行っています。“一緒に行く”のとは大きな違いがありますね。(※出典4)
このように、園生活の中で保育者が子どもをサポートし、意志を尊重することで、子どもは自ら決定し、生きる力を学んでいくのです。
ルール上に自由を与える
例えば「自由な社会」と聞くと、ルールのない社会をイメージする方も少なくないのではないでしょうか。それは、一見窮屈さがなくてとても良い社会に思えますが、実際は無秩序で、自分でルールを決めなければならず、かえって不自由さを感じるものだといわれています。
子どもが意志力を鍛えるためには、大人が決めた枠組み(ルール)が必要です。とりわけ安全にかかわることや、衛生面、公共のマナーは「やるべきことはやる、だめなものはだめ」ということを決め、良い習慣がつくように徹底しなければなりません。また、遊びの中でのルールや、給食時間のルールなど、守るべきルールはきちんと定める必要があります。
そういったルールを守ることで子どもの自制心や責任感が育ち、さらにその中で自由にさせることで、それぞれの子どもらしい自我が育まれるのです。(※出典1)
この時、保育者が気を付けていることは、子どもに盲目的な服従を強いないということです。子どものニーズに応えずただ言うことを聞かせるだけでは、子どもの自主性や意志力を奪ってしまいます。やはり、ここでも子どもの意志を尊重することが求められているのです。
意志力には回復が必要

子どもに意志力がついたら、これでもう万々歳!…といきたいところですが、注意したい点があります。それは、意志力というものには限りがあり、使えば使うほど脳が疲労し、減ってしまうということです。
意志力が減って弱まると、刺激を強く感じて自我が消耗してしまったり、誘惑に負けやすくなり自己コントロールができなくなってしまったりするといわれています。体を動かした後に休息が必要なように、意志力を使った後の脳にも休息が必要不可欠なのです。
睡眠で意志力の回復を
以前睡眠についてのコラムでもお話ししましたが(参照:「寝る子は育つ!睡眠の大切さとのどか保育園の工夫」)、消耗した意志力の回復には規則正しい睡眠が欠かせません。睡眠不足だと脳はエネルギー不足になり、脳の各領域の連携がスムーズに行われず、自制心が働きにくくなり、意志力も低下してしまいます。そうならないためにも早寝を心がけ、十分な睡眠をとりましょう。(※出典1)
大人もしっかりとした意志力を
子どもの意志力を育むためには、まず親や保育者といった身近な大人がしっかりとした意志力を持つことが大切です。子育てや保育においては、大人の意志力が試される場面が度々あります。大人も人間ですから、意志力を消耗してしまうこともあるでしょう。そんな時には、子ども同様しっかりと脳に給食と栄養を与え、意志を強く持ち、日々の子育てや保育に励んでいけると良いですね。
【出典】
1:中内玲子(2020年)『シリコンバレー式 世界一の子育て』フローラル出版
2:東洋経済ONLINE「我慢弱い子ほど「高収入・高学歴」に縁遠い理由 「マシュマロ実験」が明らかにした衝撃事実」https://toyokeizai.net/articles/-/311557(参照2024-6-21)
3:モンテッソーリほいくのたね「“3歳は意志の育ちの中間地点”イヤイヤ期と言われちゃう理由の一つなのです」https://montessori-hoikunotane.com/3sai-iyaiyaki/(参照2024-6-21)
4:モンテッソーリほいくのたね「「子どもの意志を尊重する」とは一体どういうこと??」https://montessori-hoikunotane.com/kodomono_isi_otonanokakawari/(参照2024-6-21)
◆その他コラムはこちら。